離婚をしたい方・離婚をする方へ

あなたが,パートナーとの離婚を決意した場合,離婚に向けて具体的な行動を起こしていくことになりますが,離婚については,法律によって,その手続や一定のルールが定められています。

ここでは,離婚の手続概要,離婚に付随する問題,各手続のメリット・デメリット・弁護士に依頼するメリットについて,弁護士が解説します。

1離婚の手続概要

離婚の手続としては,以下の各手続があります。

 手続の種類裁判所の関与合意の要否
第1段階協議離婚離婚・条件に合意が必要
第2段階調停離婚有(手続非公開)離婚・条件に合意が必要
第3段階裁判離婚有(手続公開)合意不要(ただし,法定離婚原因が必要)

なお,上記のほかに「審判離婚」という手続もありますが,利用するメリットが乏しいことから,実務上ほとんど利用されていません。

相手方との離婚を進める場合,まず,第1段階として,協議離婚を試みることになります。文字どおり裁判所を通さずに相手方と協議し,合意ができれば離婚が成立します。

トラブル解決の流れ

協議が調わなければ,第2段階として家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。同じ調停の場で財産分与,慰謝料,未成年の子がいる場合の親権者の指定,養育費の解決を併せ求める場合には,それらの調停も同時に申し立てることになります。調停が成立するには,当事者双方が離婚するか否かと離婚条件(財産分与,慰謝料,親権,養育費等)について,合意しなければなりません。

トラブル解決の流れ

合意できず,調停がまとまらない場合には,最後の手続として家庭裁判所に対し,裁判離婚を提起することになります。裁判離婚では,当事者が離婚するか否かと離婚条件について合意する必要はなく,裁判所が法定離婚原因の有無を証拠に基づき判断し,それが認められれば判決により強制的に離婚を命じることになります。

2離婚に付随する問題

⑴財産分与

夫婦が離婚する場合,二人の間に協力して築いた財産があれば,財産分与が必ず問題になります。財産分与には,

  1. 結婚生活中に夫婦の協力で築いた財産を分配してお互いの公平を図るという清算的側面と,
  2. 離婚によって生活に不安をきたす側の配偶者を扶養して,その暮らしの維持を図るという扶養的側面があります。

①がメインで,②が補充的なものとされています。

財産分与の対象となる財産は,財産の名義を問わず,結婚中に夫婦の協力によって得た財産になります。なぜなら,夫婦が協力して築いた財産は,いずれの名義であったとしても,離婚するに際し,分けて清算するのが公平である,という考え方が前提にあるからです。

したがって,たとえば

  • 結婚に際して実家からもらってきた財産
  • 結婚前にそれぞれが蓄えていた財産
  • 結婚前あるいは結婚中に自分の親・兄弟が死亡したことによって取得した財産

などは,夫(妻)それぞれの固有財産として財産分与の対象から外れることになります。

夫婦の協力で得た財産を清算するといっても,共働き世帯であるのか専業主婦世帯であるのか,共働き世帯であるとして,夫婦間の収入の状況等によって,具体的な分与の内容は当然に変わってきます。

専業主婦については,収入や預貯金は夫の名義だから,離婚に際して妻の取るべき財産はない,などと大きな誤解をしている人も未だにいますし,逆に,妻の取り分は,いかなる場合であっても半分だと思い込んでいる人もいます。

裁判所の裁判例等では,より具体的に寄与,貢献の割合を調査して評価しており,専業主婦のケースでは,おおむね30%~50%の間とする例が多いようです。

⑵慰謝料

離婚に至った理由が,夫婦の一方の不貞や暴力等の有責事由に基づく場合,他の配偶者は離婚の請求と共に自分の受けた精神的な苦痛に対する慰謝料を請求できます。配偶者の親族(舅,姑等)のいじめや追い出し行為などによって離婚に至った場合には,それら親族に対しても慰謝料を請求することができます。

離婚をすれば必ず相手から慰謝料がもらえると思っている人が少なくないようですが,これは間違いです。また,女性であれば,男性に対して離婚の慰謝料を請求できると思い込んでいる人もいますが,そういうことでも決してありません。

離婚の慰謝料は,離婚に関し責任がどちらにあるかがまず問題になります。最高裁判所の判例は,相手の違法有責な行為(不貞行為とは暴力行為など)によって,離婚のやむなきに至った場合に,その精神的苦痛を償うことを目的として支払われるのが離婚の慰謝料であるとして,離婚に際し,夫婦のいずれが悪かったのかという点を問題にしています。

したがって,結婚生活の破綻が夫婦双方の責任によって生じ,どちらか一方が悪いとはいえないケースでは,「慰謝料はなし」とされる場合もあります。

なお,⑴の財産分与についてもいえることですが,離婚をする際には,財産分与や慰謝料のやり取りをしないで,ただ離婚したいがために,何はさておき,とりあえず離婚だけ先にしてしまうというケースもあります。このような場合,後になって,財産分与を受けたい,あるいは,やはり少しでも慰謝料が欲しいと思ったときに,相手にそれらを請求することはできるのでしょうか?

答えは,いずれもできます。請求の方法は,まず当事者間の話し合いで行い,もしそれで解決できなければ,家庭裁判所に家事調停を申し立てることになります。調停で合意が成立しない場合は,家庭裁判所が審判により決定します。この場合の審判は,先に述べました離婚の審判とは異なり,簡単な異議だけで失効することはありません。逆に財産分与については,調停を取り下げて地方裁判所の判決を求めることはできません。慰謝料については,地方裁判所に持っていけます。

ただし,注意いただきたいのが,財産分与も慰謝料請求も,離婚とは別に請求することは可能ですが,請求できる期限があります。財産分与請求権は2年(除斥期間),慰謝料請求権は3年(消滅時効)でそれぞれ請求できなくなりますので,離婚後それぞれの期間を過ぎる前に請求することが必要です。

⑶親権

親権の問題

未成年の子どもがいる夫婦の離婚では,夫婦のどちらかを親権者と指定しなければ,離婚はできません。協議離婚の場合であれば,夫婦間で協議して,そのどちらか一方を親権者と定めなければ,離婚届は受理されません。ですから,離婚の合意はできていても,どちらが親権者になるかが決まらないと離婚はできません。

離婚調停においても,仮に離婚については双方承諾していても,親権者指定について合意ができていない場合は,調停離婚そのものが合意できず,調停離婚が成立しないことになります。

審判離婚,裁判離婚では,離婚の判決等と一緒に親権者についても裁判所が決定します。したがって,まず夫婦の間で協議離婚を前提として親権者について話し合いをする,それがまとまらないときは離婚事件と同様に家庭裁判所の調停に持っていく,それでも合意できなければ,これも離婚事件と同様に家庭裁判所の裁判離婚に持っていく,という流れになります。

親権者が問題になるのは,子どもが未成年の場合だけです。親権は,法律的に分析すれば,「身上監護権」と「財産管理権」の2つに分けられます。身上監護権とは,子の身のまわりの世話をしたり,しつけ・教育をしたりすることです。他方,財産管理権とは,子が自分名義の財産を持っているとき,あるいは,法律行為をする必要があるときに,子に代わって契約したり,財産の管理をしたりすることです。

親権者は,当然に両者の責任・権限を有しますので,離婚のときに親権者を父と決めれば,父が両者の責任者となりますし,母と決めれば責任者は母になります。結婚中は,両者の色分けを意識することはまずないと思われますが,離婚をする場合,特に幼児がいる場合に身上監護の面がクローズアップされます。

離婚の場合にどちらが子どもを引き取るかでもめるのは,実は親権のうちの身上監護が問題になっていることが多いのです。それ故に,離婚の場合,身のまわりの世話,保育だけを別にして監護者を定めることができます。この場合,親権者と監護者が別になります。たとえば,父として親権は譲れないが,何分にも子どもが小さいので,手がかからなくなるまで母の手許で育てることにしよう,という取決めであり,この場合,父が親権者,母が監護者となります。

⑷養育費

養育費は,財産分与や慰謝料とはその性質が根本的に異なります。父母が離婚して他人の関係になっても,子どもにとって父であり母であることに何ら変りありません。未成熟の子が扶養を受ける権利,親が未成熟の子を扶養する義務は続きます。親権者・監護者になるかならないか,子どもを引き取るか手放すか,離婚後の面接交渉を認めるか認めないか,こうしたことに関係なく,養育費は親として当然に分担しなければなりません。

親が子どもに対して負う扶養義務の内容は,「自分の生活水準を切り下げてでも自分と同等の生活をさせなければならない」というものであり,「自分に余裕がある範囲で,子どもに最低限度の生活をさせればよい」というものではありません。親より高い生活水準を保証するまでの必要はありませんが,例えるなら,一個のパンしかない場合に,それを共に分かち合って与えなければならず,自分の余った範囲のパンを与えればよいという意味ではありません。

親が,失業,住宅ローンその他の借金等で,経済的な余裕がないから養育費を払えないというのは,基本的には通用しません。親が経済的に困窮している場合に,具体的にどの程度の養育費を負担させることができるかが問題になりますが,全部免れるためには,非常に厳しい,客観的に認められる窮状が必要になります。

養育費請求の始期は,夫婦が別居したり,離婚したりするなど,一方の親が現実に未成年の子を養育し,他方の親に対して扶養せよと要求できる状態が始まったときです。養育費請求の終期は,「子どもが扶養を要しない状態になったとき」ですが,一般的には子どもが成人した時まで,ということになります。しかし,具体的には,要求される親の経済力・学歴,子どもの進学希望の有無などにより,終期を子どもが18歳に達した時まで,あるいは,大学を卒業する月まで,などとするケースもあります。

養育費(金額や支払方法等)は,①当事者の協議,②家庭裁判所の調停・審判,③離婚裁判に付帯請求して決定,のいずれかによって,決めることになります。

3各手続のメリット・デメリット・弁護士に依頼するメリット

⑴協議離婚

  • 協議離婚のメリット
    →当事者双方が離婚とその条件(財産分与,慰謝料,親権,養育費等)についてスムーズに話し合いを持つことができれば,他の手続に比べて,時間,費用,労力が少なくて済むといえるでしょう。
  • 協議離婚のデメリット
    →話し合いの折合いが付かない場合,交渉が長引くことが往々にしてあります。また,建前上当事者間で合意がなされればよいことになっているので,弁護士が介在せず当事者のみで話し合いを行うケースでは,財産分与や養育費の内容が一方的で,不公平なものになるおそれがあります。
  • 弁護士に協議離婚を依頼するメリット
    →協議離婚の段階から弁護士に依頼することは可能です。自ら離婚と離婚条件について相手方と交渉することは相当負担になります。

    他方,弁護士に依頼すれば,手続や交渉に精通した弁護士があなたの利益を最大限考慮して交渉等に当たってくれますので,安心して手続に臨むことができますし,あなたに有利な条件で協議が調う可能性は高くなります。

⑵調停離婚

調停離婚とは,協議離婚ができなかった場合に,家庭裁判所に対し離婚調停を申し立て,裁判官,家事調停委員を交えて離婚に向けた話し合いを行う手続です。相手との離婚をどれだけ強く望み,早期決着を希望しても,離婚に関してはいきなり裁判を起こすことは認められず,調停という裁判所での話し合いを経なければなりません(調停前置主義)。

調停においては,調停委員の関与の下,当事者の言い分を調整してもらいながら,離婚するかどうか,離婚条件(財産分与,慰謝料,親権,養育費等)について同時に話し合うことになります。そして,当事者間で合意ができた段階で,裁判官立会の下,離婚調停調書を作成することになります。

  • 調停離婚のメリット
    離婚調停には調停委員という第三者が関与するため,夫婦間での協議段階に比べ,第三者の客観的視点が加わることにより,話し合いが冷静に進み,離婚や離婚条件(財産分与,慰謝料,親権,養育費等)について合意が形成されやすくなる傾向があります。

    そして,合意ができれば離婚調停調書が作成されますが,この離婚調停調書は,裁判所の判決と同じ効果を持ちますので,調停調書に記載された財産分与や養育費が支払われなければ,調停調書に基づき相手の給料等の財産に対し,強制執行できます。
  • 調停離婚のデメリット
    裁判所を介した手続であるため時間と費用がかかります。調停は,数回は期日を重ねることになりますし,おおむね1か月単位で期日が指定されますので,解決までにある程度時間がかかります。そして,あくまで当事者の話し合いにより解決を図る手続であるため,一定の時間と労力をかけたものの,合意できず,未解決のまま手続が終了することもあります。
  • 弁護士に調停離婚を依頼するメリット
    調停離婚は,裁判手続であるため,豊富な法律知識を持ち離婚実務に精通した弁護士に依頼することで,手続を迅速かつ適切に進めることができます。

⑶裁判離婚

協議も調停も調わない場合に,最後の手続として家庭裁判所に対し離婚裁判を提起することになります。裁判では,離婚を求める一方当事者が法定離婚原因(「不貞行為」,「悪意の遺棄」,「その他婚姻を継続し難い重大な事由」など)を証拠によって証明しなければなりません。調停の場合と同様,離婚に付随する問題(財産分与,慰謝料,親権,養育費等)についても併せ請求すれば,同時に判断してもらうことができます。

離婚裁判は,訴訟提起後おおむね1か月に1回のペースで期日が開かれ,当事者双方がそれぞれ主張立証活動を行います。最終的に裁判官が判決を言い渡しますが,その前に離婚等についての意見がまとまれば,和解により手続が終結することもあります(裁判上の和解)。

  • 裁判離婚のメリット
    裁判所が法定離婚原因の有無を証拠に基づき判断し,それが認められれば判決により強制的に離婚を命じます。これは強制的なものなので,仮に,相手方が往生際悪く離婚を受け入れない態度を頑なに維持しても,それに関係なく離婚の効力が生じます。
  • 裁判離婚のデメリット
    法定離婚原因の存在を証拠に基づき証明しなければならないので,訴訟提起すれば,必ず離婚が認められるわけではなく,労力,費用,時間をかけたものの,離婚原因の証明に失敗し,離婚できないという結果も起こり得る。
  • 弁護士に裁判離婚を依頼するメリット
    裁判を有利に進めるには,離婚をめぐる法律知識や経験が物を言いますので,迷わず早期に手続に精通した弁護士に依頼すべきです。

当事務所では,離婚問題に積極的に取り組んでいます。当所弁護士は,20年に及ぶ検事としての捜査公判業務を通じて培われた事実認定力,証拠収集力及び対人交渉力には定評があり,自信もあります。親身になってお話を伺い,お客様ごとの最適解を求めて,迅速かつ適切に対処してまいりますので,離婚を検討されている皆さまも,安心して当事務所にご依頼ください。

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