企業における危機管理対応

 皆さま、こんにちは。

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 本日も企業法務に関する記事を掲載させていただきます。

1 序言

 危機(Crisis)は、それが一度生じた場合には、企業及びその関係者に多大な損害を及ぼさずにはおきません。企業の危機管理という観点からは、危機とは、企業の異常損失の原因となり得る、差し迫った、あるいは既に発生しつつある危険であるとされています。自然災害やテロ行為等、企業が行う商行為以外の原因で、企業の意思に反して被る損害であると定義づけることもできると思われます。また、その被害の対象は、人命、企業の商品その他の資産、企業活動そのもの、企業の社会的信用など、非常に広範囲に及ぶことになります。

2 危機管理の意義

 企業は、地震や津波などの自然災害、不買運動、製品リコール、コンピュータシステムのウイルス感染等の多種多様なリスクに直面しています。一度これらのリスクが顕在化すると、稼働が中断するなど企業活動が機能不全に陥り、全社的な経営にも大きな影響が及びかねません。したがって、企業が将来損害として被る可能性のある潜在的リスクを事前に予測して、各種リスクの顕在化への対策を講じることはもとより、不幸にも重大なリスクが発生してしまった場合の対応プランを事前に準備しておくことはとても大切です。そのような準備を怠れば、獲得利益の喪失、企業イメージ・信用・評判の悪化につながり、最悪の場合には、企業の不祥事の発生による場合と同様、企業の倒産等の結果に至る危険すらはらんでいます。

 ここでは、様々なリスクの中で、自然災害など外部原因に起因する危機を例に話を進めます。災害等対策・危機管理とは、「クライシス・マネジメント」とも呼ばれます。主としてその対象になるのが、2011年3月11日発災の東日本大震災に代表されるような大規模自然災害のほか、2001年9月11日発生の米国同時多発テロ当に代表される戦争・テロ、コンピュータシステムへのサイバー攻撃等も対象となり、それらに対する対策及び事後処理を意味しています。

 これまでは、このような外部的要因による災害等の対応については、そもそも不可抗力であり、避けることのできない、やむを得ないものであるという受け止めも根強かったのですが、それでも企業の維持や存続にとっては非常に重要な問題です。つまり、企業の維持・存続のためには、これらに如何に対処していくか、あるいは管理していくかが、企業の経営にとって非常に重要な課題となっています。

 クライシス・マネジメントの目的は、危険防止・危機管理を含め、企業の倒産防止にあり、企業経営の維持管理ないし保全管理にあるといえます。そして、クライシス・マネジメントは、このような危機を予知し、その危機を制御し、危機に対して備えるための管理的活動であり、危機についての合理的処理とその費用化の活動であるともいえます。

 このような危機が発生した場合の一般的な対応策としては、①被害の最小化、②不測事態への適切な対応、③事業再開対応(Recovery Plan)、④事業継続計画(Business Continuity Plan 略して「BCP」)などがある一方で、危機の予知・予測や危機の再発防止など予防措置が重要であるとされています。

 また、危機管理の問題として重要なのは、危機に遭遇した場合、如何に対応していくかですが、その対応策として、「リカバリー(再開措置)」、「継続性の確保」の2点が重視されるようになってきています。リカバリーは、事後対策に位置付けられますが、継続性の確保は、どちらかというと事前対策の側面が重視されています。

3 事業継続計画(BCP)の意義

 米国同時多発テロ事件が発生して以降、事業の継続性確保が企業経営にとって、大きな関心事になりました。その代表的なものが事業継続計画(BCP)であり、このBCPは、自然災害や事故等の発生に伴って日常の事業活動が中断を余儀なくされた場合に、可能な限り短い期間で、事業活動のうちの最も重要な機能を再開できるように、事前に計画・準備し、かつ継続的なメンテナンスを行うリスクマネジメントの一つだとされています。そのような意味合いから、事業継続マネジメント(Business Continuity Management 略して「BCM」)とも呼ばれています。

 我が国でも、事業中断の回避や備えという観点では、クライシス・マネジメントの一環として、既に多くの企業が事業継続計画の策定等に取り組んでいます。代表的な例としては、企業が製品の生産等に必要な図面やデータ等のバックアップシステムを確保することであり、首都圏に本拠を置く企業であれば、首都圏以外の中京圏や関西圏にデータセンターを保有し、そこでデータを同時にバックアップしておくことなどが挙げられます。事前の準備が適切に行われていれば、仮に重大なリスクが顕在化し、事業の中断に至ってしまったとしても、いち早く重要な機能を復旧・再開し、事業を継続していくことが可能となります。

 弊所のコラムをご覧いただき、改めて感謝申し上げます。皆さまとのご縁に感謝し、日々精進して参ります。

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