自己破産とは~自己破産のポイント~

多額の借金を抱え,それらの返済がどうしてもできない状況に陥れば,自己破産の申立てにより解決する必要があります。

ただ,自己破産の申立てにはマイナスイメージも少なくなく,抵抗感や不安を感じる方も少なくないようです。

ここでは,自己破産の手続の概要や効果,注意点等について,弁護士が解説します。

1自己破産の手続の概要

破産とは,簡単にいえば,債務者の財産状況が悪くなって,借金を返済できなくなった状態のことです。

破産手続の流れは,以下の6つの局面から成り立っています。

  1. 破産手続の開始(破産手続開始決定)
  2. 配当を受けることができる債権(破産債権)の確定
  3. 配当の基になる財産(破産財団)の管理・換価
  4. 破産手続の終了(破産手続終結)
  5. 免責手続の開始
  6. 免責手続の終了

多くの破産事件は,債務者自らが裁判所に対し,破産の申立てを行い,裁判所が破産手続開始を決定して,手続が始まります。債務者自らが破産の申立てを行うことを「自己破産」といいます。債務者は,自ら破産を申し立てることによって,債権者による個別の権利行使(取立て)に個々に応じる必要がなくなり,再起を図ることに専念できます。

債務者に,債権者らに対する配当に回すべき一定の財産がある場合には,いわゆる管財事件として,裁判所が破産管財人を選任し,この管財人の主導により上記②及び③の手続が進められます。他方,債務者にめぼしい財産が残っていない場合には,上記②及び③の手続を行う意味がありません。ですから,このような場合には,上記①の破産手続開始決定と同時に破産手続を終結します。これを「同時廃止」といい,現在では,自己破産を申し立てる人の9割以上が同時廃止になっています。

上記①の破産手続開始決定を受ければ,借金が帳消しになる旨誤解されている方が結構いらっしゃいますが,それは誤りです。破産手続に続いて免責手続が必要であり,この手続において免責が認められてはじめて,借金の負担から解放されることになります。

債務者が自己破産を申し立てた場合には,同時に免責の申立てもしたものとみなされます。債務者が個人の場合,特に消費者金融などからの借入れや,クレジットカードの使い過ぎのような,いわゆる消費者破産では,裁判所に免責が認められないというケースはそれほど多くはありません。ただし,免責は,債務者に立ち直りのチャンスを与えて,救済するための制度ですから,その必要が認められない人に対しては,免責は認められません。そのような趣旨で,法律は,一定の免責不許可事由を定めています。

2自己破産の効果

自己破産の申立てを行い,免責が許可されると,税金や健康保険料などの一部の債務を除き,その余のすべての債務が免除されます。名称の如何を問わず,以下のような債務は,すべて支払義務を免れることになります。

<支払義務が免除される債務>

  • 銀行カードローン
  • 教育ローン
  • 住宅ローン
  • 事業借入
  • 消費者金融からの借入
  • クレジットカード債務
  • 滞納家賃
  • 奨学金
  • 各種リース代
  • 買掛金
  • 未払金

逆に以下のような請求権に対する債務は,免責が許可されても,支払義務を免れません。

<支払義務が免除されない債務>

  • 租税等の請求権,罰金等の請求権
  • 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 夫婦間の協力及び扶助の義務に係る請求権,婚姻から生じる費用分担義務に係る請求権,子の監護義務に係る請求権等
  • 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金返還請求権など

なお,支払義務が免除される債務について,免除の限度額のようなものはありません。どれだけ多額の債務であっても,その全額が免除されますので,非常に大きな効果があるといえます。

3自己破産の注意点

⑴自己破産に伴うデメリット

他方で,破産手続開始決定を受けると,以下のようなデメリットが生じます。

㋑ 財産の管理処分権の喪失
㋺ 説明義務(破産者は,破産管財人や債権者集会の請求により破産に関して必要な説明をしなければなりません。)
㋩ 居住の制限(破産者は,裁判所の許可がなければ,居住地を離れて転住又は長期の旅行をすることはできません。)
㋥ 通信の秘密の制限(破産者に宛てた郵便物などは破産管財人に配達され,破産管財人は,受け取った郵便物などを開封できます。)
㋭ 公法上の資格制限(破産者は,弁護士,公認会計士,司法書士,税理士,弁理士,宅地建物取引士などになれません。)。
㋬ 私法上の資格制限(破産者は,後見人,後見監督人,保佐人,遺言執行者などになることができません。)
㋣ 官報に掲載

※なお,自己破産の大半を占める同時廃止事件の場合,㋑~㋥までの制限はありません。

⑵自己破産に伴うデメリットはほとんどない

自己破産の申立てを検討されている人の中には,

「会社をクビになってしまうのではないか。」

という不安や,

「自分が破産したことが会社や同僚に知れ渡ることにより会社に居づらくなり,会社を辞めざるを得なくなるのではないか。」

という不安を抱える方が少なからずいるようです。

しかし,破産をすること自体は,勤め先が会社であっても,役所であっても,懲戒解雇事由には当たりませんので,一般の会社員や公務員の方々が破産することによりクビになることはありません。また,上記㋣のとおり,破産事実は,官報に掲載されますが,まず,上司や同僚の方々が官報掲載情報にくまなく目を通しているようなことは考えられませんし,裁判所から会社に破産事実の通知が行くようなこともありません。つまり,破産者が自ら会社に打ち明けない限り,上司や同僚に破産事実を知られることはまずないといえるでしょう。

上記㋭のとおり,破産者になると,一定の仕事をすることはできませんが,多くの会社員の方々の仕事には何ら支障はありませんし,薬剤師,医師,看護師,建築士,特殊な職を除く一般的な国家公務員や地方公務員,学校教員なども従前どおり仕事を続けることが可能です。よって,一般の人が自己破産をする場合には,あまり大きな問題にはならないでしょう(ちなみに,上記㋭のとおり,弁護士,公認会計士等の士業などに一定の資格制限が生じますが,制限を受ける期間は,3~6か月程度にすぎません。免責が決定されれば,復活します。)。

破産者が破産手続開始の後に得た収入・財産は原則として破産者がすべて自由に使えます。また,破産者になってもその旨が戸籍や住民票に記載されることはありませんから,子供の就職や結婚等に支障が生じるのではないかといった心配は無用です。さらに,選挙権,被選挙権などの公民権が停止されることはありません。

免責の許可決定後に残る不利益としては,消費者信用取引の制限があります。これは,破産者になったことが個人情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)として登録されることに伴うものです。登録機関は,信用情報機関によって異なりますが,おおむね5~7年とされています。したがって,この期間は,銀行や消費者金融から新たに借入を起こし,あるいは,クレジット会社からクレジットカードの発行を受けることが困難になります。

⑶弁護士に依頼するメリット

債務整理弁護士

これまで詳しく見てきたとおり,自己破産申立てに伴うデメリットは決して大きいものではありません。多額の借金に首が回らない状況に陥ってしまったら,いたずらに不安な日々を過ごすようなことはせず,いち早く自己破産を申し立て,人生をやり直しましょう。

自己破産の手続を迅速かつ適切に進めるには,破産法等の法律知識や経験が物を言います。

借金整理は,自分,あるいは,親戚の者等でも行うことはできますが,自己流に対処して将来に取り返しのつかない禍根を残すことがないように,各手続に精通した弁護士に相談し,必要な手続を依頼することがとても重要です。

もちろん,借金整理を弁護士に依頼すれば,一定の費用負担が発生しますが,これは,借金苦に伴う肉体的・精神的負担から解放され,平穏な日常生活をいち早く取り戻すためのミニマムコストとご理解ください。

このようなコストの負担でさえ厳しいという場合には,全国各地に事務所を置く日本司法支援センター(法テラス)を利用することも考えられます。この機関は,生活保護受給者や,生活保護は受給していないものの,これに近い程度の所得の場合に,審査の上で,要件をみたすと判断される場合には,弁護士費用を一時的に立て替えてくれます(ただし,自己破産事件の予納金は立替えの対象とはなりませんし,民事再生事件の予納金については,生活保護の受給の有無にかかわらず,立替えの対象とはなりませんので,ご注意ください。)。

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