取引の審査及び取引リスクの管理その2

 皆さま、こんにちは。

 弊所のコラムをご覧いただき、ありがとうございます。

 本日も企業法務に関する記事を掲載させていただきます。

1 M&A取引・事業再編

 グローバルな事業活動を展開していくための手段として、新規に法人等の組織を構築するばかりでなく、既存の企業の全部又は一部を買収するということがよく行われています。この企業買収を「M&A」と呼んでいます。対象企業の一部を買収する場合には、既存株主との共同事業にしたり、新たなパートナーと共に共同事業として経営を行ったりする場合もあります。

 他方、買収した事業を自社の既存事業と合体させたり、分社化したりするなど、事業を再編することも日常的に行われています。

 国内におけるM&A取引、つまり企業買収には、大別して、株式を買い取る場合と、資産や事業を買い取る場合とがありますが、いずれの場合も、当該企業に対する支配権を確保することが重要になります。企業の支配権を確保する場合には、企業の株式買収とか、事業の資産買収にかかわらず、人的資源及び取引先との契約等も承継するかどうかにより、その選択肢が決まることになります。国際的な企業買収とは、買収対象企業やその資産が法制度の異なる国に存在する場合であり、単に商品や情報あるいはその他の権利を取得するだけでなく、経済活動を実施している主体の全部又は一部、あるいは従業員という人的資源も取得する場合もあるために、様々な紛争が生じる可能性があります。

 たとえば、企業の設立などは会社法に基づくことになりますが、会社法は、世界に共通して通用するものではないため、個々の国家が制定した法律制度の相違や、当事者間での考え方・価値観の相違により紛争が生じやすくなります。また、買収に当たり検討すべきリスクや法的検討課題が多様化するとともに、買収後の企業の運営や経営上の紛争などが起こりやすく、実際に問題となることも少なくありません。

 米国企業を買収した日本企業が、日本とは異なる慣行にとまどい、各種ハラスメントや雇用問題などで多額の損害賠償請求を受けるようなケースも多発しています。また、事前に法制度などを含め、十分な調査を行わなかったために、買収後に予想外の問題が発生し、その処理をめぐり紛争となることも十分にあります。この点は、外国企業が日本において日本企業を買収する際などにも同様の問題が起きます。ちなみに、合併や新たに導入された株式交換などによる企業の買収が行われるようになると、従来適用されていた会社法がどこまで適用されるのかが問われることになります。逆に、株式交換により米国企業の株主となり、その権利義務関係も米国の会社法に準じて理解しなければならないということが考えられます。

 他方、複数の企業が合同で企業買収を行ったり、買収後に複数の企業が共同で企業の経営を行ったりするようなケースも少なくなく、一般的に合弁事業と呼ばれていますが、このような合弁事業の運営に関して問題が発生することもあります。合弁事業の運営に際しては、当初の目論見とは異なり、当事者間で意見の相違などが起き、合弁事業の円滑な運営ができなくなることもあります。そのような場合に合弁事業を継続するかどうか、あるいは清算すべきかどうかなどで意見の対立が生じ、当事者間で抜き差しならぬ紛争に発展することもあります。これらの紛争は企業買収そのものというよりは合弁事業という企業の運営に係る紛争というべきものであり、買収後の経営統合という問題をあらかじめよく検討しておく必要があります。

2 経営統合

 国内外で、規模の大小を問わずM&Aや事業提携・事業再編等が盛んに行われています。しかし、買収や再編などを行ってみたものの、買収企業と被買収企業との間、あるいは再編の対象となる企業やその役職員等との間において、買収・再編後のマネジメントや組織体制、人事の交流などで支障が生じ、企業経営を円滑に実施することが難しくなり、あるいは失敗に陥るケースが決して少なくありません。

 この企業買収後あるいは再編後の企業経営が順調に運営できるかどうかが、経営統合の問題として強い関心がもたれるようになっています。最近では、買収や再編後の経営統合を見据えた買収の検討、特に企業のガバナンス体制や経営体制、つまり経営陣をどう構成し、どのように処遇するかという点、さらには、組織や人事制度をそのまま残すかどうかを含め、経営統合が重視されています。企業の経営統合をスムーズに進めることが、買収や再編を成功させるという点で、非常に重要な企業買収や企業再編等の要素であると考えられています。

 この買収・再編後の経営プロセスは、「PMI(Post Merger Integrationの略)」と呼ばれています。M&Aによる統合効果を確実にするためには、M&Aの初期の検討段階より統合を阻害する可能性のある要因等について事前の検証を行い、統合後にそれを反映させた組織統合マネジメントを推進することが重要であるとされています。一般的には、企業買収の場合、ほとんどの関心や努力が買収を実現させることに向けられており、買収直後の経営体制や運営体制までを意識することは、後回しになってしまっているケースが少なくないように思われます。

 PMIの対象となるものとして、大きく分けて、①経営統合、②業務の統合、③内部統制の統合、④意識の統合などが挙げられます。④の意識の統合とは、企業風土や文化の統合などを意味するもので、これは短期間では非常に難しいですが、企業買収や経営統合、事業提携を成功に導く上で、時間をかけてでも実現していかなければならない問題だといえます。

 弊所のコラムをご覧いただき、改めて感謝申し上げます。皆さまとのご縁に感謝し、日々精進して参ります。

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