夫婦と3人の子どもの5人家族のAさん一家。大黒柱のAさんが急死しましたが,Aさんの死後,Aさんには深い関係の愛人がいて,Aさんのすべての財産をその愛人女性に遺贈する旨の遺言があった場合,Aさんの妻や3人の子どもは,Aさんの遺言内容を受け入れなくてはならないのでしょうか?
上記の例は,かなり極端な設定かもしれませんが,被相続人が,相続人らにとって受け入れ難い内容の遺言を残す事態は,決して珍しくありません。
ここでは,遺留分侵害額請求権の意義等について,弁護士が解説します。
1遺留分侵害額請求権の意義
冒頭の問に対する回答ですが,遺留分の侵害を理由とする遺留分侵害額請求権を行使して,自己の利益の回復を図ることが考えられます。
民法は,一定範囲の相続人に対し,被相続人の財産の一定割合について相続権を保障しており,これを遺留分といいます。
遺留分を有する相続人は,上記のような場面で,侵害された部分を取り戻すことができます。遺留分の取戻しの請求のことを遺留分侵害額請求といいます。
この権利について,以前は遺留分減殺請求権と呼ばれていましたが,2019年7月1日に施行された改正相続法において変更されました。
遺留分制度の意義は,被相続人の財産処分の自由を保障する一方で,相続人の生活保障や財産形成への協力の評価など,遺産に対する一定の期待を保護する点にあります。
2遺留分が問題になる場面
遺留分の侵害が問題となるのは,たとえば,相続人が複数存在するにもかかわらず,被相続人がそのうちの特定1名による単独相続を実現したいと考えているときや,冒頭の例のように,深い関係の愛人がいて,その女性に大半の遺産を遺したいと希望しているときなどが挙げられます。
いずれの場合も,被相続人の意思と,それを不公平だと思う相続人側の利益の調整が問題になります。
今後,日本は,ますます高齢化が進展しますので,認知能力の低下した高齢者の数が増え,相続人側からみれば,到底受け入れ難い不合理な遺言が作成されるようなケースが増えることが懸念されます。
遺留分は,そのような不合理な遺言から相続人の権利を守り,共同相続人間の公平を保つ最後の砦としての機能が期待されています。
遺留分侵害額請求権は,相続人の最低限の生活を保障するとともに,極端な不公正を是正するため,法的に相続人に認められた権利です。
遺留分が侵害されているのではないかと不安をお持ちの方や,実際に権利を行使したいとお考えの方は,弁護士に相談し,遺留分侵害の有無を確認し,あるいは,行使すべきか否かを具体的に検討されてみることをお勧めします。
そして,いざ遺留分侵害額請求権を行使するとなると,侵害額の算定は非常に複雑ですので,ご自身のみで対応することは極めて困難であると思われます。
当事務所では,遺言書の作成や相続問題に積極的に取り組んでいます。当所弁護士は,20年に及ぶ検事としての捜査公判業務を通じて培われた事実認定力,証拠収集力及び対人交渉力には定評があり,自信もあります。親身になってお話を伺い,お客様ごとの最適解を求めて,迅速かつ適切に対処してまいりますので,遺留分侵害額請求権の行使を検討されている皆さまも,安心して当事務所にご依頼ください。