事業承継をお考えの方へ

1事業承継の現状と問題点

⑴中小企業をめぐる事業承継の現状

事業承継をお考えの方へ

2018年,事業承継の現状について,中小企業庁から衝撃的な試算が発表されました。すなわち,2025年までに70歳を超える中小企業経営者は245万人に上り,約半数の127万人は後継者が未定という深刻な状況であり,この状況を放置すれば,中小企業の廃業が進み,約650万人の雇用,約22兆円の国内総生産(GDP)が失われるという非常にショッキングな内容でした。

2019年4月に公表された「中小企業白書」(中小企業庁)によると,日本の中小企業は,2016年時点で約358万者と企業数全体の99.7%を占め,中小企業で働く従業員数は約3220万人と雇用全体の7割を創出しています。

中小企業は,日本経済の屋台骨を支え,これを牽引する重要な存在ですが,長引くコロナ禍の影響に加え,市場の成熟化,国内人口の減少及び少子高齢化といった構造的な問題に直面し,従来に比べ中小企業をめぐる経営判断は,難しいものになっていると指摘されています。

昨今,大企業のそれと比較し,中小企業の減少傾向が顕著であることや,生産性の高い中小企業の廃業が増えていることが問題視されていますが,これらの大きな要因として,中小企業の事業承継が遅々として進まないことや,これを原因とする高齢経営者の廃業選択が指摘されています。

⑵事業承継が進まない問題点

では,我が国において,思うように中小企業の事業承継が進まない理由は,どのようなものなのでしょうか?

様々な理由が考えられますが,主に以下のような理由が指摘されています。

  1. 後継者不足
    中小企業の事業承継における大きな課題として,後継者不足の問題があります。中小企業庁が公表したガイドラインによると,調査に対し,60歳以上の中小企業経営者の約半数が廃業を予定している旨回答し,そのうち廃業予定企業の廃業理由については,約28%以上の経営者が後継者難を挙げたとされています。

    中小企業が営々と努力を重ねて維持してきた企業価値が,後継者不足を理由とする廃業によって失われることは,日本経済の価値の一部喪失を意味します。識者から,「中小企業の事業承継問題は,もはや個々の企業だけの問題ではなく,国家レベルの課題である。」旨指摘されるのも頷けます。

  2. 税務問題
    また,中小企業の事業承継が進まない要因の一つとして,税務面の問題もよく指摘されるところです。中小企業の多くはいわゆるオーナー企業ですので,中小企業の事業承継においては,経営(役職)の承継と共に所有(株式)の承継が必要になります。

    事業承継には,親族内承継,親族外承継(従業員や社外の第三者への承継)がありますが,いずれにおいても,贈与税や相続税等の税負担が早いタイミングでの事業承継の阻害要因になっていることは否めません。場合によっては,会社財産が後継者の納税資金に充てられることもありますが,事業承継直後の会社に多額の資金負担が生じることは,事業承継の大きな障害になりかねません。

    事業承継に伴う税務問題を解決するため,平成30年に株式承継に係る税負担を一切生じさせないことを可能とする,いわゆる「事業承継税制の特例」が創設されました。有効に活用したいところですが,適用には厳しい要件と,その後の長い納税猶予期間における要件遵守等が求められるため,十分な検討を行う必要があります。

  3. 債務保証問題
    さらに,中小企業の事業承継をめぐる大きな阻害要因としてよく指摘されるのが,債務保証の問題です。

    金融機関は,融資の際に,経営者に連帯保証を求めることが多く,事業承継時は後継者からも新たに保証を求めることが少なくありませんが,企業経営の経験やノウハウに乏しい後継者が事業を承継することになるため,場合によっては前経営者の保証を解除せずに,後継者からの保証を得るようなケースもあります。

    そのため,事業承継に当たっては,債務・保証・担保等の円滑な承継にも十分に留意する必要があります。これらの対策を怠ると,事業承継の実現が困難になるばかりか,債務等の負担が重荷になって,後継者が承継自体を断念する事態を招きかねません。

2事業承継の手法及び早期着手の重要性

⑴事業承継の手法

事業承継には,対象となる企業の経営状態,財務状況,後継者の有無等によって様々な手法が想定されます。事案ごとに適切な手法を選択し実行することが重要です。

親族又は従業員に対する事業承継を目標とする場合,まずは,承継企業の所有形態,つまり,経営者とその親族が大半の株式を所有するオーナー企業か否か,個人事業形態であるかによって,選択する手法や対策は異なります。

個人事業であれば,事業用資産の承継が問題となり,平成31年度税制改正で創設された「個人版事業承継税制」と,従来からの相続税法上の小規模宅地特例等との比較選択が焦点となるでしょう。

対象企業がオーナー企業でない場合には,株式移転に伴う税負担は大きくないと想定されるため,経営自体の承継に注力することが重要です。

他方,対象企業がオーナー企業である場合には,経営の承継と共に株式の承継が必要となるため,誰に対し,どのような形で経営及び所有を承継するかを検討しなければなりません。

そして,対象企業の財務状況を踏まえた株価対策の必要性ですが,オーナー企業でも株価の評価額がそれほどでない場合は,通常の譲渡等により株式を後継者に移転するのに税務上の障害は少ないため,適切な手段により株式の早期移転を検討するのが望ましいと思われます。

他方,会社の内部留保が大きく,株価が高く評価される場合においては,株価対策が重要になります。要件を充足するのであれば,新設された事業承継税制の特例を活用することも検討すべきでしょう。

以上は,親族又は従業員に対する事業承継を目標とする場合を念頭に置いた内容であり,適当な後継候補者がいない場合には,M&Aを検討することになりますが,この場合マッチングや契約等への準備に相当の時間と労力を要することに留意すべきです。

⑵事業承継の早期着手の重要性

業績に特に問題がなかった中小企業が,事業承継の問題を契機に廃業に至るケースも少なくありません。円滑な事業承継を実現するためには,なるべく早い段階で事業承継の計画を立て,後継者の確保及び育成を含む準備に着手することが非常に重要です。

しかし,現実に目を向けると,中小企業経営者の高齢化が着実に進行しているにもかかわらず,事業承継の準備に着手している企業は少なく,70代,80代の経営者でさえ半数に満たないといわれています。事業承継は息の長い作業であり,一般に5年~10年程度を要するとされており,中小企業経営者の平均引退年齢が70歳前後で推移していることを踏まえると,60歳前後頃から,事業承継に向けた準備に着手する必要があるといえるでしょう。

事業承継の問題は,中小企業経営者が,当該企業の将来に向けた重要な経営対策の一環として取り組む必要がありますが,その円滑かつ適切な実施には,法務,税務,会計その他様々な分野の専門的知識や能力が物を言いますので,経営者個人が独力で対処することはまずもって不可能です。

そのため,「そろそろ事業承継を検討したい。」とお考えの皆さまや,「事業承継に着手したが,何をどう進めてよいかわからない。」といったお悩みをお持ちの皆さまは,企業の経営課題について日常的に相談し,助言やアドバイスが得られる顧問弁護士を是非導入いただきたく思います。

そして,顧問弁護士と日々の経営課題を共有し,将来を見据えた対話を重ね,待ったなしの事業承継に向けた準備等を着実に進めていくことが非常に重要です。

3事業承継を検討されている中小企業経営者の皆さまは,当事務所にご依頼ください。

当事務所では,中小企業の事業承継・M&Aに積極的に取り組んでいます。

当所弁護士は,20年に及ぶ検事としての捜査公判業務を通じて培われた事実認定力,証拠収集力及び対人交渉力には定評があり,自信もあります。

また,当所弁護士は,法律の専門家として,事業承継をめぐる法的問題はもとより,登録税理士を兼ねておりますので,税務上の問題にもワンストップで対応することが可能です。

親身になってお話を伺い,お客様ごとの最適解を求めて,迅速かつ適切に対処してまいりますので,中小企業の事業承継をご検討の皆さまも,安心して当事務所にご依頼ください。

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