M&Aをお考えの方へ

1中小企業をめぐる事業承継の現状

中小企業をめぐる事業承継の現状

中小企業は,日本経済の屋台骨を支え,これを牽引する重要な存在ですが,長引くコロナ禍の影響に加え,市場の成熟化,国内人口の減少及び少子高齢化といった構造的な問題に直面し,従来に比べ中小企業をめぐる経営判断は,難しいものになっていると指摘されています。

昨今,大企業のそれと比較し,中小企業の減少傾向が顕著であることや,生産性の高い中小企業の廃業が増えていることが問題視されていますが,これらの大きな要因として,中小企業の事業承継が遅々として進まないことや,これを原因とする高齢経営者の廃業選択が指摘されています。

中小企業の事業承継が思うように進展しない要因としては,様々な内容が考えられますが,主な要因として

  • 後継者不足
  • 税務問題
  • 債務保証問題

などが指摘されることが多いです。

事業承継には,対象となる企業の経営状態,財務状況,後継者の有無等によって様々な手法が想定されます。事案ごとに適切な手法を選択実行することが重要です。

そして,円滑な事業承継を実現するためには,なるべく早い段階で事業承継の計画を立て,後継者の確保及び育成を含む準備に着手することが非常に重要になります。

M&Aとは,「Mergers And Acquisitions」の略で,「合併と企業買収」を意味します。株式譲渡,合併,事業譲渡,会社分割などが代表的なM&Aの方法であり,M&Aも,我が国の喫緊の課題ともいうべき事業承継のひとつの態様です。

2中小企業M&Aの現状及び特徴

⑴中小企業M&Aの現状

では,日本において,M&Aは,年間にどの程度行われているのでしょうか?

この点,レフコデータという会社が,国内企業が関与するM&Aの件数を集計しており,近年では年間おおむね4000件程度で推移しています。しかし,この統計は,メディアで取り上げられたり,上場企業等が自ら開示したりした件数を集計したものと考えられ,中小零細企業のM&Aは含まれていません。数の上では圧倒的に多いこれらを含めれば,日本では毎年2万件程度のM&Aが行われている旨の指摘もあります。

⑵我が国の中小企業M&Aの特徴

我が国の中小企業M&Aには,一般的に次のような特徴があるとされています。すなわち

  • 友好的M&Aが行われる
  • 国内企業同士でM&Aが行われる
  • 仲介会社が関与して行われる
  • コンプライアンス上のリスクが伴う可能性が高い

といった特徴です。これから順に説明します。

●特徴1:「友好的M&Aが行われる」

皆さまの中には,M&Aという言葉から,いわゆる「敵対的買収」や「乗っ取り」などを連想される方も少なくないかもしれません。敵対的買収とは,社長等の経営陣が反対しているにもかかわらず,買収を仕掛けることであり,このような敵対的買収は,株主と経営陣が別々のケース,つまり会社の所有と経営の分離が徹底された上場企業等において起こり得るものです。   

他方,我が国の未上場の中小企業等では,社長等の経営陣が会社の株主を兼ねるケース,つまり会社の所有と経営が一致する場合がほとんどであり,通常,これらの中小企業が対象となるM&Aは,オーナー社長と買い手企業が,譲渡の条件等を協議し,お互いに同意した上で成立します。

したがって,中小企業のM&Aは,ほぼ例外なく友好的買収になります。

●特徴2:「国内企業同士でM&Aが行われる」

テレビや新聞等の報道では,日本企業が海外企業を買収する,あるいは,逆に海外企業が日本企業を買収する,いわゆるクロスボーダーM&Aがよく取り上げられますが,中小企業M&Aの大半は,国内企業同士のM&Aです。まず,クロスボーダーM&Aには大きなリスクが伴う上,投資銀行等に支払う報酬も高額に上ることから,それだけのリスクやコストに見合うメリットがないと買収の対象にはなりにくいという事情があります。また,我が国の中小企業経営者は,オーナー社長が多いのですが,売却先は国内企業にしたい旨のマインドが非常に強いようです。

このような事情から,我が国の中小企業M&Aは,売手も買手も国内企業であることがほとんどです。

●特徴3:「仲介会社が関与して行われる」

M&Aへの関与者として,一般的に,M&Aアドバイザー(M&Aアドバイザリー会社)とM&A仲介会社がありますが,我が国の中小企業M&Aに関与するのは,ほとんどの場合,後者のM&A仲介会社です。

M&Aアドバイザーは,売手又は買手のどちらか一方に雇われて,雇主の利益の最大化に向けて活動する存在です。

他方,M&A仲介会社は,売手と買手のいずれか一方の利益の最大化を目指すのではなく,中立的な立場で関与し,両者の交渉を仲介する役割を担います。上場企業が売手になる場合,利益相反の問題が生じ得る仲介ではなく,法的リスクを最大限回避するため,投資銀行等のアドバイザーを付けて,相手方企業と丁々発止の交渉を行うことになります。

これに対し,中小企業のオーナー社長が売手になる場合,報酬が高く,議論が紛糾して交渉が長期化する傾向にあるアドバイザーではなく,友好的に交渉がまとまりやすい仲介会社を活用するケースが多くなります。

●特徴4:「コンプライアンス上のリスクが伴う可能性が高い」

あくまで相対的な話になりますが,未上場である中小企業では,上場企業に比べて,会計監査を受けていたり,内部統制がきちんとできていたりする企業がほとんどありません。

したがって,中小企業M&Aは,上場企業を対象とするそれに比べ,コンプライアンス上のリスクが高くなる傾向は否めません。

3中小企業M&Aの今後の展望

ここ10年の間に日本のM&A市場は大きく成長し,公表ベースのM&Aの件数は約2倍に増え,我が国の中小企業M&Aが活況を呈しています。

その中で,中小企業庁が2020年に「中小M&Aガイドライン」を策定し,健全な中小企業M&Aを後押しする施策を打ち出しています。国の後押しに加え,以下のような理由から,中長期的なトレンドとしては,今後も中小企業M&Aの件数は増えていくものと考えられます。

⑴親子共々親族内承継を敬遠する傾向

かつての日本では,「子どもが親の商売を継ぐのは当たり前」という伝統がありましたが,近年では,個人の多様な価値観を尊重すべしとする風潮が高まり,親として,必ずしも我が子に会社を継ぐことを期待しなくなっているようです。また,子どもの側も,会社員としてある程度ゆとりのある生活を送っていたり,医師等の専門職についていたりすれば,あえてリスクの高い家業を継ぎたくないと思う人が増えているようです。

このような状況の中,ひと昔前に比べ,第三者への譲渡であるM&Aが注目されており,今後もM&Aによる譲渡を目指すオーナー社長が増えていくものと予想されます。

⑵M&Aの成長戦略としての積極的活用

社会の情報化・複雑化が進み,企業経営を取り巻く環境が厳しさを増す中で,企業経営者には,これまで以上にスピーディーな経営判断が要求されます。

そのような中,有望事業をすべて一から自社で立ち上げるのでは,競業他社に市場を奪われ,成長の機会を失うことにもなりかねません。昨今国内外で成長著しい企業に共通する特徴として,M&Aを成長戦略として積極的に活用している点が挙げられます。そして,このような企業の多くは,一度M&Aをすると,それ以降も積極的にM&Aを活用する傾向にあります。今後もこのような傾向は続くものと予想されます。

⑶M&Aによる企業の統合化・業界再編の進展

我が国は,各業界内の企業数が多く,過当競争に陥っており,欧米先進国に比べ,企業の利益率が低いことは,かねて指摘されているところです。日本は,今後も人口減少に伴い国内需要が縮小していきますので,現状の企業数を維持することは不可能です。実際に,「中小企業白書・小規模企業白書」によれば,1999年から2016年の17年間で,約126万社も企業数が減少しています。

多くの識者は,日本全体の生産性を上げる方法の一つとして,企業統合を促進し,企業規模を大きくすべき旨主張していますが,企業統合によって,個々の企業の社員数が増えれば,ICTシステム投資等の様々な投資を行うメリットが生じ,これにより業務の効率化や顧客サービスの改善が図られ,ひいては利益率の向上につながることが期待でき,説得的な主張と考えられます。

したがって,後継者不足の事業承継の問題だけでなく,日本が先進国としてのプレゼンスを維持するために日本企業の生産性の向上を図らなければならない旨のマクロ的視点からも,M&Aにより更なる企業の統合化・業界再編を進めていくことは避けられないと思われます。

4M&Aにおける弁護士の役割

M&Aも,個々の事案により規模や具体的な手続等は異なりますので,弁護士に求められる役割も,事案ごとに異なりますが,弁護士が担うべき代表的な役割は,以下のようなものです。

⑴スキームの提案,進行管理のサポート

M&Aには,様々なスキームがあり,それぞれメリット・デメリット,要件や必要な手続が異なります。弁護士としては,事案ごとに最適なスキームを抽出して提案することが求められます。また,選択されたスキームの進行管理等を担当することもあります

⑵契約書の作成等

M&Aにおいては,秘密保持契約書,仲介契約書,基本合意書,株式譲渡契約書等の契約書面を作成することになりますが,これら契約書面の作成やリーガルチェックは,弁護士の主要な役割の一つです。

⑶法務DD(ディー・ディリジェンス)の実施

法務DDとは,M&Aの対象企業の法的リスクを横断的に洗い出す作業です。主に買手側の弁護士が実施します。具体的には,一定の期間内において,当該企業内に保存された契約書,諸規程類,議事録等の客観的資料を精査するとともに,役員,幹部職員らのインタビューを行い,当該企業の法的リスクを分析・評価します。

⑷M&A実施後のサポート

法務DDに関与した弁護士は,対象企業の法的リスクを熟知しており,M&A実施後も,顧問弁護士として,対象会社の法務面を継続的にサポートすることが少なくありません。

法務DDで抽出された法的リスクは,M&Aの実行までに解消されるものもあれば,実行後も残存せざるを得ないものもあります。後者については,顧問弁護士も,当該リスクの推移等を注視し,その解消に向けたサポートを行うことになります。

5M&Aを検討されている中小企業経営者の皆さまは,当事務所にご依頼ください。

M&Aを検討されている中小企業経営者の皆さまへ

当事務所では,中小企業の事業承継・M&Aに積極的に取り組んでいます。

当所弁護士は,20年に及ぶ検事としての捜査公判業務を通じて培われた事実認定力,証拠収集力及び対人交渉力には定評があり,自信もあります。

また,当所弁護士は,法律の専門家として,M&Aをめぐる法的問題はもとより,登録税理士を兼ねておりますので,税務上の問題にもワンストップで対応することが可能です。

親身になってお話を伺い,お客様ごとの最適解を求めて,迅速かつ適切に対処してまいりますので,中小企業のM&Aをご検討の皆さまも,安心して当事務所にご依頼ください。

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