企業における法務業務の変遷及び具体的な法務業務の内容 その2

 皆さま、こんにちは。

 弊所のコラムをご覧いただき、ありがとうございます。

 本日も企業法務に関する記事を掲載させていただきます。

 5月15日掲載記事「2具体的な法務業務の内容」の続きです。

 ③契約書の審査・作成

 企業間取引のための各種契約の締結及び各契約内容の審査を行うことは企業法務の主要な業務の一つといえます。現在は、法務業務のうち、日常的に関与する業務の大半が日々の取引に伴う契約書との格闘といっても過言ではないかもしれません。とはいえ、大手企業はもとより、中堅企業や比較的規模の大きい中小企業においても、日常の取引に伴う全ての契約を審査することはほとんど不可能です。

 通常は、新規取引、国際的取引、あるいは企業買収やアライアンス等の重要な契約・特殊な契約等に限定して審査業務を行わざるを得ないところも少なくないものと推察します。このような審査業務の対象契約以外の定型的な契約については、標準的な契約フォーム等を準備し、社内ネットワークやクラウドシステム等を利用して企業内で共有し、その利用を推進することを通じて、法務担当部門の業務負担の軽減を図りつつ、各種リスクの回避や紛争予防といった成果をあげることが期待されているといえます。

 ④重要取引の法的審査及びリスクの分析

 法務担当部門にリスクマネジメント機能の一部を担うことが期待されている場合、その代表的な役割は、重要な取引における法的リスクを含む各種リスクを分析し、適切な対策を講じることになるでしょう。

 想定されるリスクを回避し、あるいは転化するには、取引スキームの変更を検討しなければならない場合もあります。その場合、その検討は当該取引の開始以前に行うことが重要になりますが、法務担当部門にそのための知識やノウハウがなければ、当該取引から発生する法的リスクを含む各種リスクの分析ができない可能性が高いため、法務担当部門としては、企業から寄せられるリスクマネジメント機能に対する期待に応え得る能力をあらかじめ備えておくことが重要です。

 このような各種リスクの分析を適時適切に行うことができれば、リスクへの対応やリスク軽減のための対策も可能となり、そのために必要な契約条項の検討や作成等にも大いに役立つことになります。これは、リスクをあらかじめ回避するという「予防法務」の側面のほか、「戦略法務」としての役割を果たすことにも繋がります。

 ⑤知的財産権の管理

 情報化社会の進展により、知的財産権に対しての注目が高まり、知的財産権の管理も企業経営における重要なリスク管理の対象になっています。初期の頃は、知的財産権管理の中心は商標権の管理でしたが、最近のようにビジネスモデル特許など取引方法等が特許権の対象となり、あるいはICTの進展に伴い企業内における技術開発や企業間の共同開発等が増え、特許権等の管理が増大する傾向にあるといえます。

 これら特許権等の技術ライセンス業務や商標の実施許諾業務等が増えてくると、ライセンス契約書の作成やその内容の検討業務を中心として、特許に関連する訴訟等も、訴訟管理の一環として法務担当部門が対応することになります。

 ⑥株主総会

 株主総会に関連する業務は、法務担当部門が専門的に担当するというよりは、伝統的に総務部等の組織で担当している会社が多く見られます。株主総会の準備のなかで、招集通知等の書面については、弁護士等の専門家による事前チェックを受けますが、想定問答の作成やリハーサル等は、社内の組織で行うことになります。その過程で、法務担当部門は、必要な支援や協力を行います。

 最近では、株主総会のリハーサル等を行う企業が増えていますが、株主にとっての重要な関心事については、十分な配慮を払わなければなりません。取締役会等の運営に関する質問や、コーポレート・ガバナンス・コードへの対応等に関心を寄せる株主が増えていますので、それらに対して適切に対処しなければなりません。仮に、不祥事当があれば、特に慎重に対応することが肝要です。

 これら株主総会の準備段階においても、法務部門として、その専門的な立場から必要な協力を行っていくことが求められています。また、最近では、株主に対し、様々な企業情報が開示されており、豊富な知識と経験をベースに質問をされることもありますので、事前準備の重要性・充実化の要請がいやが上にも増しているといえます。

 ⑦訴訟管理

 法務業務の中心として、クレーム対応や訴訟等紛争解決に対する業務があります。通常では、クレームや紛争は、協議や第三者の関与によりそのほとんどが解決されるのですが、経営上重要な事項や、どうしても公正中立な立場にある裁判所等の法的判断が求められるケースでは、訴訟等の手段によって解決を目指すことになります。

 訴訟手続等の利用に至った場合の事務処理や証拠資料の整理等は、法務担当部門が、顧問弁護士と相談・協力しながら行うことになります。つまり、法廷においては、弁護士がその訴訟実務を担当し、法務担当部門は、企業組織内において必要な意思決定や弁護士とのコミュニケーションなどを、弁護士と共同して行うことになります。最近では、インハウスローヤーと呼ばれますが、弁護士資格を有する者を役員あるいは社員として迎え入れ、法務業務に当たらせる企業が少なくありません。インハウスローヤー導入により、当該企業の法務部門の充実・強化が図られることは望ましいことですが、このような導入企業であっても、訴訟実務そのものを企業内弁護士に任せることは少なく、ほとんどの場合、外部の顧問弁護士を代理人として起用し、訴訟等の対応に当たらせることが多いようです。

 ⑧法令動向フォロー

 法務業務を円滑に実施するためにも、また、企業がコンプライアンス(法令遵守)を徹底するためにも、日頃から法令の制定改廃の状況をチェックするなどの法令動向に関する情報収集は非常に重要です。このような法令情報を企業内に周知徹底するためにも、法令動向をニュースとして社内へ提供し、あるいは企業内で説明会を開催するなどすることが法務担当部門の重要な役割となっています。

 ⑨企業内規程集の整備

 法務担当部門の役割は、企業経営におけるリスクマネジメント機能の一部を担うことである旨お話ししましたが、全社的なリスクマネジメント体制を構築し、運用・統制するための方法として、社内で様々な規程を策定・整備することが求められています。

 法務担当部門としては、全社的・統一的な規程類等の策定に関して、中心的な役割を果たすことが求められます。また、各事業部門に妥当する個別の規程類等に関しては、各部門で策定する企業が多いと思われますが、全社的な諸規程等との整合性や、用語の統一等の共通ルールについては、法務担当部門が主導的役割を担うことが求められています。

 かつては、社内で策定された規程類や各種マニュアル等は、管理職にまとめて配布し、その手元で社内ルールの確認等が行われていましたが、最近では社内ネットワークやクラウドシステム等を利用して企業内で共有し、誰でも、いつでも閲覧できる状況になっているのが通常ですので、これらの運用や管理に当たっても、法務担当部門の役割は非常に重要になっています。

 ⑩コンプライアンス教育その他社内法務教育

 企業経営においては、企業内の法務担当者を含め、全ての役職員が法令遵守を適切に果たさなければなりません。そのためには、企業活動に最も密接に関連する法分野において、必要な法令遵守についてのマニュアル等のコンプライアンスシステムを構築しなければなりません。たとえば、独占禁止法コンプライアンスマニュアルや企業行動基準の策定等を中心とする法務マニュアルの作成と、それらの企業内関係者に対する周知徹底です。そのための企業内教育も重視されるところであり、これらの機能を十分に果たすことが法務担当部門には期待されています。法令遵守が叫ばれるようになって久しいなかで、企業をめぐる不祥事は後を絶たないのであって、コンプライアンス領域における法務担当部門の役割は、今後ますます重要になっていくものと思われます。

 弊所のコラムをご覧いただき、改めて感謝申し上げます。皆さまとのご縁に感謝し、日々精進して参ります。

 東京池袋で企業法務に対応できる弁護士をお探しなら「清水法律会計事務所」へ気軽にお問合せ下さい。

お問い合わせフォーム

 

ページの上部へ戻る

keyboard_arrow_up

05055270312 問い合わせバナー