教えて死後の手続!改葬,永代供養墓の利用,散骨ってどうすればいいの?

 皆さま,こんにちは。

 弊所のコラムをご覧いただき,ありがとうございます。

 大切な家族とのお別れは,いつか必ず経験することになります。

 できれば永遠に避けて通りたいと願っても,いつかは必ずお別れの時が訪れます。

 大切な人を失った喪失感や悲しみに打ちひしがれながらも,必要な手続を遺漏なく行っていかなければならず,残されたご遺族の方々には相当な負担がかかることになります。

 大切な人を失った後の手続として,皆さまが一般的に思い浮かべる事柄としては,葬祭関係の手続と遺産相続に関する手続が挙がられるのではないかと思います。

 後者について,弊所は,法務税務の両面において相続に関するご相談やご依頼を常時受け付けておりますので,お困りごと等がございましたら,お気軽にご連絡いただきたく存じますが,一般論を簡潔に申し上げますと,遺言の有無を確定させた上で,遺言があれば,当該遺言を執行する手続を行うことになります。遺言がない,あるいは,遺言はあるものの,当該遺言の内容だけでは,遺産の分配を完結させることができない場合には,相続人の範囲等を確定させた上で,対象者全員による遺産分割協議を進めることになります。これらを経て,納税額が存する場合には,被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告・納付手続を済ませる必要があります。

 この遺産相続に関する手続を進めるだけでも,ご遺族の方々には相当な負担がかかることになりますよね。

 本日は,前者の手続,すなわち,葬祭関係の手続について,押さえておいていただきたい基本的な内容を整理しておきたいと思います。

1死後必ず必要になる手続

 大切な家族を失った場合,残された家族は,被相続人の死亡を,その本籍地又は住居地の市区町村役場に届け出なければなりません。このことは,「戸籍法」という法律に規定されています。一定の届出義務者が,被相続人の死亡の事実を知った日から7日以内に行わなければならず,原則として医師が作成する死亡診断書又は死体検案書を添付して届出を行うことになります。

 届出義務者について,戸籍法第87条は,以下のように規定しています。

 「戸籍法第87条 次の者は,その順序に従って,死亡の届出をしなければならない。ただし,順序にかかわらず届出をすることができる。

  第一 同居の親族

  第二 その他の同居者

  第三 家主,地主又は家屋若しくは土地の管理人

2 死亡の届出は,同居の親族以外の親族,後見人,保佐人,補助人,任意後見人及び任意後見受任者も,これをすることができる。」

同居の親族等に該当する方々は,同居の家族等が亡くなった場合,戸籍法の規定に従って,死亡の届出を行わなければなりません。期間の計算に当たり,初日を算入するかどうかは,対象となる内容によって異なります。この点,戸籍の届出に関しては,戸籍法第43条の規定により,初日を算入する扱いになっています。

 同居の親族等であれば,通常,家族等の死亡をその当日のうちに知るのがほとんどであると思われます。たとえば,死亡者をA,届出をすべき同居の親族をBとし,Aが令和3年11月1日に亡くなり,BがAの死亡をその当日に知ったというケースであれば,Aが死亡した11月1日を期間計算において算入することになりますので,同月7日までに届出を行わなければなりません。届出期間の終了日が,日曜祝日等の閉庁日の場合,翌開庁日に受理してもらえますが,記載内容や添付書類の不備を指摘されるなどして,追加の対応が必要になることもあり得ますので,きちんと届出期間を念頭に置いた上で,余裕をもって対応することが大切です。

 この死亡の届出に関し,虚偽の届出を行った者に対しては,「1年以下の懲役又は20万円以下の罰金」という刑事罰が科せられます。また,亡くなった家族等に係る死亡について,正当な理由なく期間内にすべき届出をしない者に対しては,「5万円以下の過料」という行政罰が科せられますので,注意が必要です。

 家族等が亡くなった場合,通夜,葬儀・告別式を執り行い,故人の遺体を荼毘に付した上で,用意されたお墓に焼骨を納めるのが一般的な流れだと思います。

 故人の遺体の埋葬や火葬等に関して規定する法律が,「墓地,埋葬等に関する法律」です。

 この法律は,「第一章 総則」「第二章 埋葬,火葬及び改葬」「第三章 墓地,納骨堂及び火葬場」「第四章 罰則」の四章で構成されています。第一章は,法律の目的や各用語の定義規定を設けています。第二章は,私たちが埋葬や火葬を行うに当たって,守るべきルール等を規定しています。第三章は,墓地,納骨堂又は火葬場を経営する者たちが守るべきルール等を規定し,第四章は,この法律の規定に違反した者に対する刑事罰を規定しています。

 私たちが家族等を亡くし,火葬等を行うに当たり,留意しなければならない規定は,この法律の第3条~第5条までの規定であり,以下のとおりです。

「第3条 埋葬又は火葬は,他の法令に別段の定があるものを除く外,死亡又は死産後二十四時間を経過した後でなければ,これを行ってはならない。但し,妊娠七箇月に満たない死産のときは,この限りでない。

第4条 埋葬又は焼骨の埋蔵は,墓地以外の区域に,これを行ってはならない。

2 火葬は,火葬場以外の施設でこれを行ってはならない。

第5条 埋葬,火葬又は改葬を行おうとする者は,厚生労働省令で定めるところにより,市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。

2 前項の許可は,埋葬及び火葬に係るものにあっては死亡若しくは死産の届出を受理し,死亡の報告若しくは死産の通知を受け,又は船舶の船長から死亡若しくは死産に関する航海日誌の謄本の送付を受けた市町村長が,改葬に係るものにあっては死体又は焼骨の現に存する地の市町村長が行うものとする。」

 故人を葬る方法としては,「墓地,埋葬等に関する法律」を前提にすれば,大別して「埋葬」という方法,すなわち遺体をそのままお墓(土中)に葬る方法と,「火葬」,すなわち遺体を焼き,その焼骨をお墓に埋蔵又は納骨堂に収蔵する方法の2つが想定されます。現在の日本では,ほとんどの場合が後者のパターンであり,「埋葬」の方法が行われることは極めて稀であると思われます。ですから,遺族の方々が,市区町村長から受けるべき許可証は,通常「火葬許可証」になります。

2改葬,永代供養の方法

 先祖伝来の立派なお墓があり,檀家になっている菩提寺があれば,当該お墓に故人の焼骨を埋蔵し,当該菩提寺の僧侶にお墓の管理や供養などをお願いすることになります。

 しかし,核家族化や都市部への人口集中が進む今日,子の世代が,地方の田舎に老親を残しつつ,東京,大阪等の大都市で生活や仕事をしているようなケースが少なくありません。そういうケースでは,田舎の菩提寺を頼りたくても,日常の行き来が難しく,それが困難であることが少なくないように思います。また,かねて菩提寺の僧侶との折り合いが悪いため,故人が亡くなったのを機に,菩提寺を自分たちの生活拠点に近い別の寺に変更したいと考えるようなケースもあるでしょう。

 さらに,皆さまも,「永代供養墓」という言葉をお聞きになったことがあると思います。最近,少子化や核家族化等の進展に伴い,利用が増えている比較的新しいお墓の利用形態です。従来は,家ごとにお墓を建立,維持・管理し,子孫に代々受け継いでいくのが一般的な考え方でしたが,これには当然に相応のお墓の維持管理コスト等がかかります。これに対し,永代供養墓は,霊園や墓地の管理者が遺族に代わって供養・管理をしてくれるお墓ですので,契約に際して永代供養料を支払う必要はありますが,その後の維持管理コストは不要であり,トータルのコストを大分抑えることができるようです。少し寂しい感じもしますが,残される家族にできるだけ負担をかけたくないといった思いから,早くから永代供養墓の利用を検討し,必要な契約手続等を済ませておくケースが徐々に増えているそうです。

 故人が生前から永代供養墓の利用に必要な準備等を進めていたケースでは,死亡を届け出た市区町村長から火葬許可証を入手し,故人の遺体を荼毘に付した上で,故人が既に契約締結した永代供養墓に焼骨を埋蔵します。また,故人が生前に契約をしていなかった場合でも,故人の遺志を尊重し,永代供養墓の利用を検討する場合はあり得ます。このような場合も,市区町村長から火葬許可証を入手し,故人の遺体を荼毘に付した上で,遺族が自らの立場で特定の霊園等と永代供養墓の契約を締結し,当該供養墓に焼骨を埋蔵することになるでしょう。

 問題は,市区町村長から火葬許可証を入手し,一旦先祖伝来のお墓に焼骨を埋蔵したが,上記のような理由から,菩提寺を従来の寺から自分たちの生活拠点に近い別の寺に変更した上で焼骨を移し替えたい,あるいは,今後の維持管理コストを軽減するため,焼骨を永代供養墓に移し替えたいといった希望がある場合です。これらの場合,どのような手続を踏めばよいのでしょうか?

 手続の詳細や費用等は,対象となるお寺等によって異なりますので,その時点で必要になる手続や費用を確認しながら,菩提寺の変更や焼骨の移し替えを行っていただく必要がありますが,ここでは,手続の概要を整理しておきます。

 菩提寺の変更に伴う焼骨の移し替えの場合であれ,永代供養墓の利用に伴う焼骨の移し替えの場合であれ,既にお話しした「墓地,埋葬等に関する法律」が規定する特定の手続を踏む必要があります。いずれの場合であっても,同法律が規定する「改葬」の手続が必要になります。「改葬」とは,「埋葬した死体を他の墳墓に移し,又は埋蔵し,若しくは収蔵した焼骨を,他の墳墓又は納骨堂に移すこと」(墓地,埋葬等に関する法律第2条第3項)と定義されています。非常に細かい話で恐縮ですが,同法律では,故人の遺体を火葬した後の焼骨を墳墓に納めることを「埋蔵」として,火葬した後の焼骨を納骨堂に納めることを「収蔵」として,用語を使い分けています。

 上記のとおり,改葬を行おうとする者は,市区町村長の許可を受けなければならず(墓地,埋葬等に関する法律第5条第1項),これが改葬許可になります。

 菩提寺の変更に伴う焼骨の移し替えの場合も,永代供養墓の利用に伴う焼骨の移し替えの場合も,事前に,現在焼骨を埋蔵するお墓がある市区町村から「改葬許可証」を取得する必要があります。この許可申請は,対象の市区町村に対し,改葬許可申請書を提出して行いますが,添付書類として,焼骨の移転先から入手する「受入証明書」と現在の焼骨管理者から入手する「埋蔵・収蔵証明書」を併せ提出する必要があります。

 いずれの場合も,対象の市区町村から改葬許可書を取得した上で,現在焼骨を埋蔵するお墓のある菩提寺において「墓じまい」を行い,その後取り出した焼骨を,変更後の菩提寺が管理するお墓又は永代供養墓に埋蔵することになります。その際,従来の菩提寺から,離壇を思い止まるよう執ように説得されたり,法外な離檀料を請求されたりして,トラブルに発展することもあるようです。

 墓じまいをするに当たり,菩提寺の住職に閉魂供養(閉眼供養)を行ってもらった場合,同供養に伴う相応額の御布施は,当然に支払うとして,離壇するか否かは,日本国憲法が保障する信教の自由(憲法第20条)に基づき,各人が何人からも干渉等を受けずにそれぞれ自由に決めることができる事柄です。寺院も,取り巻く経営環境が徐々に厳しくなるなか,檀家からの御布施等は貴重な収入源ですので,離壇を思い止まらせたい胸の内は理解できます。しかし,檀家が離壇しようとするのを不当に阻止するようなことは許されません。

 また,法外な離壇料の請求についても,当事者双方の契約において,お互い納得して当該金額の離壇料に関する取決めを交わしていたような場合はともかく,そのようなケースは極めて稀でしょう。契約上の取決め等がないにもかかわらず,従来の菩提寺から法外な離壇料を請求されても,これは明らかに根拠を欠くものですので,支払要求に応じる必要はありません。

 仮に,離壇に当たり,このようなトラブルに巻き込まれ,ご自分の力だけではうまく解決が付かない場合には,早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

3散骨の方法

 散骨とは,故人の遺骨をパウダー状になるまで粉砕し,海や山などの自然に葬る方法です。

 地球規模で見れば,世界各地に見られる比較的ポピュラーな葬送法のようですが,日本では,散骨の習慣はなく,現在の我が国には,散骨に関して規定する法律は存在しません。

 専門の粉骨業者に依頼するなどして,遺骨を一片2mm以下のパウダー状になるまで粉砕することが前提ですが,遺骨を粉々に粉砕した上で,明らかに他者に迷惑を及ぼすおそれのない場所で行う散骨については,我が国の法律に抵触することはありません。

 ただ,散骨を規制する法律はなくても,各地の自治体が条例で散骨を独自に規制しているケースはあります。散骨を検討する場合には,検討する候補地での散骨が当地の条例によって規制されていないかどうか,事前に調査し,必要な手続があれば,決められた手続をきちんと踏むことが大切です。

 散骨には,一般に,海洋散骨,山間散骨があり,いずれの場合でも,遺族自らが散骨を行う方法のほか,専門の散骨業者に散骨を委託する方法などがあります。

 荼毘に付した後の焼骨を自宅等で保管中であれば,上記のとおり遺骨をパウダー状になるまで粉砕するなどして,比較的スムーズに散骨を行うことができると思われます。他方,焼骨を既に菩提寺が管理するお墓に埋蔵しているケースであれば,「2改葬,永代供養の方法」の該当箇所で言及したとおり,従来の菩提寺から,離壇を思い止まるよう執ように説得されたり,法外な離檀料を請求されたりして,トラブルに発展することもあるようです。

 根拠を欠く法外な離壇料の支払要求に応じる必要など全くありませんが,仮に,このようなトラブルに巻き込まれ,ご自分の力だけでは解決が図れそうにない場合には,早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

 なお,散骨を行うために,菩提寺等に対し,焼骨の引き渡しを求めた場合に,相手先によっては,市区町村が発行する改葬許可証の提示を頑なに求めてくるケースもあるようです。「墓地,埋葬等に関する法律」が規定する「改葬」の定義,すなわち,「埋葬した死体を他の墳墓に移し,又は埋蔵し,収蔵した焼骨を,他の墳墓又は納骨堂に移す」という改葬の定義を前提にすれば,散骨が,同法律の規定する「改葬」に当たらないことは明らかですので,改葬許可証の提示は不要と考えるのが自然であると思われます。

 弊所のコラムをご覧いただき,改めて感謝申し上げます。皆さまとのご縁に感謝し,日々精進して参ります。

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