与信管理等その2

 皆さま、こんにちは。

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 本日も企業法務に関する記事を掲載させていただきます。

1 実務上利用頻度の高い担保

 実務上よく利用される担保は、以下のとおりです。

⑴ (根)抵当権

(根)抵当権とは、担保物件(不動産等)を担保提供者に占有・使用させながら担保の目的となし、債務の弁済がなかったときにこれを競売し、その換価代金から優先的に弁済を受けることのできる担保権のことをいいます。そのため、不動産を担保の目的とすることが多くあります。(根)抵当権には、既に発生している特定の債権を担保する抵当権と、既に発生している債権だけでなく、将来発生する不特定の債権を担保する根抵当権があります。

根抵当権の被担保債権・極度額の定め方としては、①特定の継続的取引契約から生じる債権、②一定の種類の取引(売買取引、請負取引、金銭消費貸借取引等)によって生じる債権、③特定の原因に基づき債務者との間に継続して生じる債権、④手形・小切手上の債権等という取決めを根抵当権設定契約書において定めることとなります。また、極度額としては、債権の元本のほか、利息、遅延損害金等を含む債権極度額を設定することとなります。

根抵当権は、一定の元本確定事由が発生すると、その時点で存在する特定の元本債権のみを担保するものに変わり、その後発生する債権は担保の対象外となります。

⑵ 質権

 質権とは、債権者が担保として提供を受けた物件を、債務が弁済されるまで留置して、債務の弁済がなされなかったときにこれを競売又は任意処分し、その換価代金から優先的に弁済を受けることのできる担保権のことをいいます。

 質権がよく利用されるのは、債権者が占有(保管)することが可能な場合ですが、一般的には、株式や債券が利用され、また、特許権・商標権・著作権等の知的財産権に関しても利用されていますが、譲渡担保でも可能です。

 この質権に関する対抗要件としては、動産を質権に取る場合は、担保提供者からの動産の引渡しを受け、占有することです。また、定期預金、火災保険、敷金・保証金を質権に取る場合は、第三債務者(質権の目的物が定期預金であれば銀行、火災保険であれば保険会社、敷金・保証金であれば賃貸人)の承諾書を取得し、それに確定日付を得ておくことが必要となります。ちなみに、知的財産権を質権の目的とする場合には、所定の登録手続を行うことが必要になります。

⑶ 譲渡担保

 譲渡担保とは、債権者の債務者に対する債権を担保するために、担保提供者(債務者又は債務者以外の第三者)が所有する物件の所有権を債権者に譲渡して、債務者が債務を弁済しなかったときに、その物件から他の債権者に優先して自己の弁済を受けるという担保権をいいます。

 しかし、譲渡担保は、抵当権や質権のような法律で定められている典型担保ではなく、商慣習上発生し、判例上認められるようになった非典型担保です。これまで、担保提供者が日常占有し・使用している機械や商品等の動産を担保に取る場合、古くは民法で定める質権という方法しかありませんでした。ところが、質権の場合は、要物性の要請から、担保物件を債権者に引き渡さなければ質権の効力が生じないため、担保提供者は担保物件を自ら占有・使用できないことになり、営業に支障を来たすという問題がありました。

 抵当権であれば、担保提供者に占有・使用させたまま担保に取ることができますが、抵当権で担保に取れるのは不動産に限られており、機械や商品等の動産は、工場財団抵当を除き、抵当権の目的物とすることができません。そこで、機械や商品等の動産を担保提供者に占有・使用させたまま担保取得する方法として考え出されたのが譲渡担保です。

 なお、最近では、特定債権(たとえば、特定の売掛金等の債権)や集合債権(現在又は将来発生する不特定の債権)に関しても、譲渡担保が利用されることが増えています。

 ⑷ 担保としての債権譲渡

 この債権や集合債権譲渡担保を設定する場合は、譲渡債権を特定するため、第三債務者の住所・社名、譲渡債権の種類・対象商品・発生期間を明記することとなります。

 従来は、登記制度がなく、民法上の対抗要件しかありませんでしたが、契約時に第三債務者に債権譲渡通知書を発送すると、第三債務者の信用不安を引き起こすおそれがあります。したがって、債権譲渡通知書は債務者の倒産時に発送せざるを得ませんが、その場合は、「対抗要件の否認」の問題が生じます。そこで、停止条件付型・予約型契約を締結し、債務者の倒産時に効力を発生させ、第三債務者に「債権譲渡通知書」を発送する方法が取られていました。その後、対抗要件の否認を認める判例が出され、停止条件付型・予約型契約は対抗要件の否認の問題をクリアできる有効な手段にならなくなりました。

 他方、1998年に動産・債権譲渡特例法が制定され、債権譲渡の対抗要件具備の方法として新たに債権譲渡登記制度が導入されたため、現在は、本契約を締結し、契約時に債権譲渡登記を行っておき、債務者の倒産時に第三債務者に登記事項証明書付き「債権譲渡通知書」を発送するという方法が主流になっています。

 この方式は、債権流動化の一環として利用されている債権譲渡においても利用されています。

⑸ 電子記録債権の譲渡担保・質権設定

 電子記録債権制度とは、電子記録債権法に基づき、磁気ディスク等をもって電子債権記録機関が作成する記録原簿に電子記録することにより、はじめてその発生、譲渡等が行われることになる金銭債権のことです。

 この電子記録債権制度が導入された理由としては、売買取引等により発生する通常の債権(指名債権)は、支払期日まで待たなくては資金化できませんが、指名債権を支払期日前に資金化するためには、指名債権を第三者に譲渡するか、指名債権を手形(手形債権)化し、この手形を第三者に裏書譲渡するかの2つの方法しかありませんでした。しかし、指名債権の場合は、債権の存在や帰属が不明確なためその確認を要し、また譲渡する際の対抗要件の取得に手間がかかるうえ、同一の債権が二重に譲渡されるリスクがあります。そこで、指名債権や手形債権の場合のリスク・デメリットを排除し、安全かつ円滑な債権の流通を確保するために創設されたのが電子記録債権法に基づく電子記録債権制度です。

 そこで、電子記録債権の譲渡担保・質権設定も、電子債権記録機関の登録原簿に譲渡記録・質権設定記録と呼ばれる電子記録をすることによって効力が生じることになります。この譲渡記録・質権設定記録も電子記録権利者(譲受人・質権者)と電子記録義務者(譲渡人・質権設定者)が電子債権登録機関に請求することによって行います。

 弊所のコラムをご覧いただき、改めて感謝申し上げます。皆さまとのご縁に感謝し、日々精進して参ります。

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