取引の審査及び取引リスクの管理その1

 皆さま、こんにちは。

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 本日も企業法務に関する記事を掲載させていただきます。

1 新規取引の管理

 企業において、内部統制システムが整い、法令等遵守のための社内規程等が整備された場合に、それらの遵守を徹底するために中心的な役割を担うのは、法務部門にほかなりません。

 一般的に、企業は、そのビジネス活動や業務の発展、また、その経営の継続性を確保するためにも、新しい製品等の開発や新規分野への進出など、常に新たな取引にも取り組んでいくことが求められています。このような新規取引のなかには、企業として取り組むべき相手かどうかや、取引内容として適切かどうかが疑問となるような取引もあるのではないでしょうか。従来から継続して行ってきた取引などは、それまでに積み重ねてきた過去の経験等で、法的なリスクについて分析が行われており、法的リスクへの対応や備えもある程度できています。他方、新規の取引や取引先に関しては、この辺りの法的なリスクマネジメントを徹底して行うことが求められます。新規取引の内容に関しては、不用意にも架空取引に巻き込まれるケースや、マネー・ロンダリングなど組織犯罪に巻き込まれる可能性もゼロではありませんので、より慎重な対応が求められます。そのために、法務部門としては、当該取引に関与することになった経緯など、取引自体の必要性を含め、合理的な説明ができるのか、また、取引自体に異常性はないか、さらには、組織における意思決定の過程において、当該企業の経営理念や社訓等に違背していないかなどの観点からのチェックも必要になります。

2 重要プロジェクトの管理

 企業にとって、大型投資が必要なプロジェクトや、経営にとって影響を及ぼす可能性のある重要プロジェクトへの参加は、企業経営にとって戦略的な面で常に必要とされることとなります。特に、グローバルな事業投資等においては、その法的問題や運営上の問題だけでなく、投資環境や現地への影響度なども意識しておくことが必要です。

 通常は、このような重要プロジェクトを開始する場合、関連する部署・組織を巻き込み、様々な部門のメンバーから構成されるプロジェクトチームが結成されることが多く、そこで詳細な検討が進められていくことになります。そのなかで、法務部門としては、事業投資先における法的な情報や投資規制等の投資環境など、初期的調査を含むインフラ環境の調査を行うことが求められます。場合によっては、現地弁護士を含む、社外の専門家を起用することもあります。そして、初期段階で、ある程度の概要が判明すれば、それを踏まえたより詳細な調査を行うこととなり、当該プロジェクトの実現可能性等を判断することになります。これは、「フィージビリティ・スタディ」と呼ばれており、法務部門としては、様々な法的規制、特に外資規制、外為法、税法、労働関係法などの調査を実施します。

 また、共同パートナーを起用する場合には、関係する情報交換等が行われることになりますので、必要に応じて秘密保持契約を締結する、あるいは、当該プロジェクト実施を決定し、それを前進させるためにも予備的な合意書を交わすことなどがあります。予備的合意は、一般的にその確認時点での当事者間の合意事項や正式契約締結までに解決すべき懸案事項などを確認する手段として利用されますが、それ以外にも誠実交渉義務、秘密保持義務、独占的交渉権、交渉の過程で第三者から申込みを受けた場合などの優先的権利等が規定される場合もあります。

 フィージビリティ・スタディにおけるプロジェクトの実現可能性には、当然のことながら当該プロジェクトの採算性なども含まれますが、法務部門としても、具体的な事業計画や資金調達計画、人員計画を含め、全体的なスキーム作りや、作成すべき契約書類がありますので、その内容等を十分に理解しておくことが求められます。

 万が一にも、コンプライアンス違反を生じさせるようなことがあれば、当該プロジェクトからの撤退を余儀なくされることにもなりかねません。また、我が国の親会社をも含めた訴訟リスクや信頼等の失墜による事業上の重大な損失に繋がる可能性もありますので、この点十分に留意すべきでしょう。

 

 弊所のコラムをご覧いただき、改めて感謝申し上げます。皆さまとのご縁に感謝し、日々精進して参ります。

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