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本日も企業法務に関する記事を掲載させていただきます。
このページの目次
1 コンプライアンスの意義
法令や規則等のいわゆるハードローといわれているものの遵守は、企業にとって最低限の義務であるとの認識の下、社内の規則等や社会規範、企業倫理などに加え、それぞれの企業が持つ価値観(企業理念や社是・社訓など)に照らし、社会的に許容される範囲で企業の経営が行われることがコンプライアンス(法令等の遵守)に沿った経営であり、このような経営が、理想的な「コンプライアンス経営」であると認識されています。それを企業として、より具体的な価値判断基準として示したものが「企業行動規範」「企業行動基準」であり、それらは多くの企業によって策定されています。これら全てを遵守することがコンプライアンスだという時代になっていると思います。
コンプライアンスとは、法令のグレーゾーンも含む法律専門家の判断、アドバイスに基づいて行動する部分も含まれており、法令だけでは網羅できない部分の遵守、つまり社会の構成員としての企業、企業人として求められる価値観、倫理観、その他の社会的規範、業界としての自主的なルール、利潤の最大化、事業の効率化、雇用の促進など、また人権や文化の尊重、環境保全、安全性なども対象とされており、最近では、社会的責任などもこの対象だとされています。
この法令等の遵守、つまりコンプライアンスのプログラムは、会社法でも求められている内部統制システムの重要部分となっており、これは、もともとは企業会計システム全体のコントロールを確立するという意味でした。その目的としては、業務の効率性の確保、財務報告の正確性の確保、及び企業行動における法令等の遵守とされています。
2 コンプライアンスの必要性
コンプライアンスが強調されるようになったのには、社会環境の変化があります。そこでは、コンプライアンス違反を起こした結果、不祥事による企業のダメージが大きくなったこと、また組織主義的な価値観から個人主義的な価値観への転換とともに、雇用の流動化が進み、内なる国際化と呼ばれるグローバルスタンダードの要請、企業の社会的責任(CSR)が重要な企業戦略の一つであるなどとされた社会環境の変化があります。
また、事前規制型社会から事後規制型社会への転換や、民法改正、商法改正、独占禁止法改正、公益通報者保護法の成立、有価証券報告書開示などの法規制の変化、また経営トップの意識・姿勢の変化があります。特にコンプライアンス態勢構築へのリーダーシップ発揮とともに、経営トップの熱意等に基づき、コンプライアンス担当部署の設置や、経営トップによる社員に対する継続的啓蒙活動が推進されました。コンプライアンスは会社の最重要経営課題であるという意識付けが、入社式や年頭・年度初めの挨拶、経営方針発表等社内向け公式行事や社内報等で行われています。
3 コンプライアンス態勢の構築
コンプライアンス態勢の構築に当たり、何を実現すべきかという問題がありますが、基本的には、全社を挙げた仕組み作りにおいて、経営者や管理者だけでなく、一般社員も与えられた役割を果たすこと、それにより内部統制システムを構築することであるといえます。そのためには、法律や規則などの十分な理解、手続等の正しい処置、疑問・不安を残さない仕事の進め方などを含め、仕組みの整備と運用(いわゆるPDCAサイクルの展開)とともに、経営トップによる社風構築のための社内外への決意表明、率先して制度・行事・取組みにコミットするということが必要です。
そのような仕組みが機能するためには、経営トップからのコミュニケーションだけでなく、従業員からトップに向けたコミュニケーションも円滑になるようなコミュニケーション・システムを整備し、それを適切に運用することが必要です。そこには、報告・連絡・相談体制の構築や、また、行動基準やマニュアルの整備、社員が疑問点等を気軽に尋ねることができる部署の設置、コンプライアンス担当部署と各部門のコンプライアンス担当者からなるコンプライアンス委員会などの体制整備も必要になります。
そして、多くの企業において設置されている、いわゆる内部通報制度の設置も必要になります。これは、企業外部への告発が行われる前に、社内に通報されることにより、企業内部の自浄作用により適切な解決を図ることを趣旨とするものですが、秘密保持、公正な調査など、企業としての適正な対応が求められることになります。特に、重要になるのが経営トップの意識の変革であり、内部通報の存在意義を認め、社内の意識改革をすることなど、社員への明確な意識付けが必要となります。
通報受理後の調査体制として、実質的な調査のできる体制の構築や企業内部の協力体制、また調査後の通報者への報告することが必要であり、最大でも20日以内に行うことが必要とされています。
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