皆さま、こんにちは。
弊所のコラムをご覧いただき、ありがとうございます。
本日も企業法務に関する記事を掲載させていただきます。前回の「事業の撤退」というテーマの続きです。
⑶ 整理・撤退の方法
投資企業の整理・撤退の具体的方法については、国ごとに調査を行うことが必要になります。当然といえばそうなのですが、まずは事業としての再建の可能性を検討することが重要です。事業を継続しながら整理する場合は当然ですし、事業から撤退する場合でも、第三者に譲渡するのか、あるいは清算を含め、リストラクチャリング(事業の再構築)の可能性を検討すべきです。
このリストラクチャリングの可能性を検討するには、大別して、企業の債務を整理・再構成して債務返済負担を軽減する債務改善面から見たファイナンシャル・リストラクチャリングと、企業の経営内容や業務の改善をすることにより、より利益を生む体質に改善する運営改善面から見たオペレーショナル・リストラクチャリングがあります。オペレーショナル・リストラクチャリングは、企業のコストを削減し、収益を効率的に上げることにより、キャッシュフローを生み出すための必要な改革となります。余剰人員の削減、労働力の間接部門から直接部門へのシフト、コア・ビジネス以外の営業部門を整理・売却、また遊休資産も処分することに加え、経営管理システムの改善や経営者・従業員のインセンティブ導入など、意識改革も必要とされます。
他方、ファイナンシャル・リストラクチャリングは、企業の財務体質改善のために債務面及び資本面の両面から実施されることになりますが、最も一般的なのは、債務返済のリスケジュールです。元本返済の据置期間も含め債務の返済期限を延長し、金利負担の軽減など、当面の債務負担を軽減する方法です。これらリスケ後の債権を株式に転換(デット・エクイティ・スワップ)したうえ、リストラ後の健全化された企業の株式を再度投資家に売却、あるいは証券化するなどの手法により、企業としては債務負担を減らすこともでき、債権者としても買い取った債権の回収を可能とする仕組みも存在しています。
これらはそれぞれ一長一短があり、どちらが良いかは一概にはいえませんが、その企業の業界の特殊性や、関係国の法整備の状況、整理・撤退に関する当該国家としての制約・制限などを考慮して、選択することが重要になります。
⑷ 撤退条項
共同事業では、通常、事業を行うことを合意したときと同じ状態がいつまでも続くとは限りません。共同事業を遂行する過程において、当該事業を取り巻く環境が変化することもあるでしょうし、それぞれの事業者の当初の思惑が変化することがあります。このような場合に当初の共同事業契約に拘束されることが全ての共同事業者にとって必ずしも最適であるとは限りません。たとえば全事業者の全会一致で決定される重要事項について、意見が一致せずに意思決定ができないために、当該事業の運営に重大な支障が生じることもあり得ます。その結果、共同事業の当事者のいずれかが事業から撤退することになってしまう場合もあります。
共同事業はいつも必ずうまくいくというものではありませんので、このような場合に備え、共同事業につき、あらかじめ一定の期間を定めておく、あるいは、一定の目的を達成したら解散するなどを規定することも少なくありません。すなわち、共同事業からの撤退のための引き金となる事由をあらかじめ当事者間で話し合い合意しておくこともあります。このような共同事業を終了するためには客観的な事由を挙げることが求められます。たとえば、累積損失が資本の50%以上となるような事態は、累積損失の発生に特別な理由がない限り、債務超過に陥ること、更にはその事業の継続が厳しい状態が予想されますので、その時点で、今後の事業展開についての見直しも含め、事業の再検討を行うことが必要になります。このような場合、新たな資本の導入も含め、事業の再構築ができない場合には、共同事業を清算せざるを得ないということになります。
もちろん、いずれかの当事者が事業を引き継いで継続していく場合もありますので、そのような場合の株式や持分権益の譲渡の対価をどう取り決めるかという基本的な考え方をあらかじめ合意しておくことが必要となります。日本の会社法でいえば、反対株主による株式買取請求権のようなものですが、国によっては、このような株式や権益の譲渡に関して、政府等の許認可機関の許認可を必要とするところもありますので、撤退する場合には、特に留意する必要があります。
弊所のコラムをご覧いただき、改めて感謝申し上げます。皆さまとのご縁に感謝し、日々精進して参ります。
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