企業における法務業務の変遷及び具体的な法務業務の内容

 皆さま、こんにちは。

 弊所のコラムをご覧いただき、ありがとうございます。

 本日も企業法務に関する記事を掲載させていただきます。

1企業における法務業務の変遷

 昨今、企業法務の重要性が広く認識されるようになり、大企業や上場企業だけでなく、ある程度の規模の企業は、法務業務を担当する法務部などの専門組織を設けるようになってきました。また、企業法務を担当する専門組織はなくても、法務専任の担当者を置いている企業や、専任ではないが一定数の社員に他の業務と法務を兼務させている企業も増えています。このように企業の組織内において、何らかの形で法務業務を担当するスタッフが増えている事実は、企業という組織において、法務業務の重要性がより意識し理解されるようになってきたことを示しています。

 企業における初期の法務業務は、紛争や問題が起きてから、これらに対処する問題対応型の「臨床法務」でしたが、その後、紛争や問題が起きてからの対処では遅いということが自覚され、それらを事前に予防することの重要性が強調されるようになり、取引自体や契約書の審査等をはじめとする「予防法務」の必要性が謳われるようになりました。そのために、自ら法務の組織を拡充するところが多くなり、予防法務が法務担当業務の中心とされるようになってきました。

 その後、企業経営に重大な影響を及ぼす主要な案件に対しては早い段階から関与することが求められるようになり、「戦略法務」も重視されるようになりました。また、最近では、法令遵守(コンプライアンス)をはじめとして企業経営上の問題に関心が高まるとともに、経営に関与する法的な問題にも関与する「経営法務」が注目されるようになっています。

2具体的な法務業務の内容

 では、法務業務の内容とは、具体的にどのようなものでしょう。その内容は、対象企業によって当然に異なりますが、ある程度の類型化を試みれば、①与信管理、②不良債権の管理・回収、③契約書の審査・作成、④重要取引の法的審査及びリスク分析、⑤知的財産権の管理、⑥株主総会対応、⑦訴訟管理、⑧法令動向フォロー、⑨企業内規程集の整備、⑩コンプライアンス教育その他社内法務教育、といった内容を挙げることができると思います。

 今回は、①の与信管理と②の不良債権の管理・回収について整理させていただきます。

 ①与信管理

 企業活動に当たっては、取引に伴い生じる種々のリスクを極小化することが求められます。そのうち、企業にとって最も身近な問題は、債権回収に係る貸倒れのリスクを回避することにあるといっても過言ではないでしょう。企業にとっては、会計上の利益はもちろん、最終的に、債権を回収してはじめて利益が実現することになります。

 そのため、債権の貸倒れリスクを減少させる方法として、取引を始める場合の相手先企業の審査から、取引の限度額設定等の与信管理が重要な課題となります。一般的にこのような与信管理の業務は、企業分析という専門的な知識が必要になりますので、そのための別組織として審査部等が行っている企業が多いと思われますが、法務担当部署において実施しているところもあります。

 また、与信管理は審査部等で行っているものの、担保取得業務等の債権保全業務は、法務部で担当しているという企業も多いようです。

 ②不良債権の管理・回収

 取引において発生した不良債権に関する経理処理等は、その債権の回収の可能性の判断や回収時期等が影響することになります。これら債権の回収に関連しては、対象企業の整理等について法的手続が関係している場合もあり、倒産関連法の知識や倒産実務に関する経験も必要です。また、回収そのものに関しても、法的手続が関係することもあるため、法務担当部署において担当するところも多いようです。あるいは、倒産手続の開始や手形・小切手の不渡り等、倒産の兆候が見られると直ちに法務担当部署が乗り出すというところも少なくないようです。

 不良債権が発生してしまった場合の効果的な回収やその処理は、企業経営にとって非常に重要な事柄になりますので、経営管理の一環として本来は同一の組織で行うことが望ましいといえるでしょう。どうしても、不良債権の回収・管理業務の一部に法務担当以外の組織を関与させる必要がある場合でも、不良債権回収の可能性の評価や担保物件の評価、貸倒引当金の積立処理、あるいは回収不能の場合の貸倒償却の決定等に関し、法務担当組織からいつでも必要な協力を行うなど、部門相互間の連絡連携を密にすることが重要です。

 弊所のコラムをご覧いただき、改めて感謝申し上げます。皆さまとのご縁に感謝し、日々精進して参ります。

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